日本では安全保障関連法案にまつわるニュースが多くなっています。いよいよ法案が参議院でも通過し、成立しようかという時期みたいですね。日本の重要法案を巡る動きも気になりますが、ネパールではいよいよ新憲法が成立し公布されようとしていますから、僕はやはりネパールの政治情勢のほうが気にかかっています。

ネパールでは制憲議会で提案された新憲法に対して、9月5日までに43の修正案が提出されました。そして16日には最終草案が可決されました。これまでの制憲議会は憲法を作る作ると言いながら7年以上もまとまっていなかったわけですが、ここにきてえらくスピードアップしています。外国から地震後の復興支援を引き出すアピールのため、という要素が強いようです。

新憲法成立に向けた動きが加速すると同時に、草案に反対するグループの抗議活動も活発になっています。特に新しい州の境界線に納得いかないことから、バンダが多発・長期化しているところが多いようです。タライ地方を中心にした抗議活動により、これまで40人以上が亡くなっているという情報もあります。

現在ネパールの正式名称は「ネパール連邦民主共和国」となっていますが、まだ「州」というものができておらず、正式に連邦制が導入されているわけではありません。それがここにきて、やっと7州の区割りでまとまろうとしています。7州の区割りは次の図のようになっています。

Nepal7states

参照サイト:Karuma99 Federal Nepal : Timeline and Proposals

※このニュースサイトに、これまでの憲法草案を巡る大まかな流れが解説されています。

州は政治的に大きな権限を握ることになるため、現地の住民としては同じ部族は同じ州でまとまりたいと思うわけです。でもそうすると、一致結束して中央に向けた反対運動をされる可能性が出てきて、政府としては不安が残ります。たとえば西のほうの州が独自にインドと親しくなっていくと、国家分裂の危機が生じる!と考えるようで、制憲議会提案の州割りは、地元の声を完全に反映したものではありません。

一応制憲議会としては「経済発展のしやすさを重視した州割り」が考えられ、可決されました。それで州の境界線は決まりましたが、中央から押し付けられた州の境界線に納得いかないグループがまだまだ存在します。またネパールは多民族国家なので、多くの少数民族が点在しています。彼らは自分たちが見過ごされていると感じるようで、州の境界線や少数民族が関係する憲法に同意できないみたいです。

そもそも2015年6月には8州とすることで制憲議会は合意していたものの、激しい反対に遭って6州になったり7州になったりし、やっと現在の形になったようです。でもやはり、すべての人が納得できるものにはなっていないようですね。

それで9月20日に向けて、ますますバンダ(道路閉鎖や抗議活動など)が過激化する可能性があります。これまでもデモ隊が警官を殺害したり、流れ弾に当たって子どもが亡くなったりもしています。タライ地方に住んでいる人は特にですが、安全確保には十分ご注意ください。

日本大使館からも次のようなお知らせが届いています。

大使館からのお知らせ(15-80)

マデシ戦線及びバイディア派マオイストらによるネパール全土でのバンダ(「ネパール・バンダ」)及び「ブラック・デイ」の宣言について

大使館に入った情報によりますと、9月20日(日)、ネパール全土でマデシ戦線及びバイディア派マオイストによるバンダが実施されるとのことです。

バンダの実施期間中は、終日、公共交通機関が停止する可能性があるほか、走行中の自家用車・バイクがバンダ実施者から攻撃を受ける可能性がありますので御注意下さい。

また、政府は、9月20日の憲法制定を祝して、同20日(日)及び21日(月)の午後7時から午後8時までの間、ネパール全土の各家庭等において照明を付けることを推奨しています。しかし、逆に上記抗議グループはこれらの日を「ブラック・デイ」として照明を付けないことを呼びかけています。これまで抗議グループがこのような宣言をしたときには、照明の付いてる住宅(日本人住宅を含む)に対し、投石等を行った事例があります。周囲の状況に十分に注意を払い、知人等から情報を得るなどして、抗議グループのターゲットにならないよう注意して下さい。

 

ネパールに住んでいる外国人も、ネパールの新憲法がどのようなものになっているのか関心があると思います。ネパールの制憲議会は専用のWebサイトを立ち上げていまして、そこで憲法草案の全文も確認することができます。興味がある人は一度ご覧になってみてください。ネパール語の勉強にもなりますよ~。

Constituent Assembly of Nepal:नेपालको संविधानको परिमार्जित विधेयक

さすが憲法だけあって長いのと法律用語があるので、僕も全部読んで理解できているわけではないんですが・・・LGBTIの保護を明記する文言があって自由や人権保護に力を入れているように見える部分もあれば、報道規制も可能になりそうな条文、信教の自由が侵されそうな文言も含まれていて、これからどんなふうに政府が解釈していくのかが注目されます。

憲法が定まった後、それを元にしてどのような法律が作られるか、そして時の政府がどのように文言を解釈して運用していくかによって、ネパール人も外国人も影響を受けます。でも今回可決された新憲法はネパールが民主化して初めてできた憲法ですから、今後何がどう変わるのか、専門家でも予想しにくいようです。

報道や信教の自由が規制されかねない憲法案は、ネパールの民主化や経済的な発展を妨げると思うんですけどねぇ。ヒンズーの原理主義的な勢力が力を持つと、外国の影響や外国人を排除しようとする動きが生じることがあります。そうなるとビザが取りにくくなったりして、僕たち外国人が住みにくくなってしまいます。それは避けて欲しいものですね。

そしてこの新憲法に沿って役所の仕事の仕方が変わったりすると、慣れるまでに相当な時間がかかりそうな気がします。新たな憲法を理解して適切に運用していく能力は、ほとんどのネパール人にはないんじゃないかなぁ。役人も国民も混乱して、役所の手続きごとはますます時間がかかるようになりそう・・・と、僕は思いました。

地震からの復興や経済発展、教育向上のためになすべきことがまだまだあるネパールですが、少しでも住みやすく訪れやすい国になってもらうよう願うばかりです。しばらく混乱が続きそうなネパールですが、新憲法にまつわる情報やトラブル対処法などあれば、ぜひ教えてくださいね。